【五節句】人日の節句

 ◇魔女のこよみ帖

小寒の投稿と被りますが、七草がゆでおなじみの人日(じんじつ)の節句について
もう少し掘り下げてみます。

五節句とは

五節句の「節」は季節の代わり目という意味で、「節目」を表します。

季節の節目に、五穀豊穣・無病息災・子孫繁栄などを祈り、神さまにお供えをしたり邪氣を祓ったりする行事のこと。

節目の時に神さまに何かを『供える』ことから『節句』とも言われます。

古代の中国では正月の一日を鶏、二日を狗(犬)、三日を猪(豚)、四日を羊、五日を牛、六日を馬の日として、それぞれの日にはその動物を殺さないようにし、7日目を人の日(人日)として犯罪者に対する刑罰は行わないことにしたそうです。

人日の節句

日本で1月7日を人日の節句の節句として七草がゆをいただくという習わしが広がったのは、江戸時代になって江戸幕府が五節句を式日(現在でいう祝日)に定めたことがきっかけであると言われています。

庶民に広がったのは江戸時代になってからですが、七草がゆをいただくという習わしはそれよりも昔から行われていた「若菜摘み」という行事が元となっていると言われます。

この「若菜摘み」は万葉集、古今和歌集、枕草子など平安時代の書物にも登場するほど身近な行事でした。

有名なのは百人一首にもなった古今和歌集の光孝天皇(こうこうてんのう:第58代の平安時代の天皇)の歌ではないでしょうか?

君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ

あなたに差し上げるため、春の野で若菜を摘んでいる私の袖に雪が積もっています。
という歌だそうです。

この若菜摘みの行事と、大陸から伝わった七草菜羹(ななくさのさいかん:人日の節句に七種の野菜を入れた羹(あつもの)を食べて無病を祈る習慣)が合わさり、人日の節句に七草がゆをいただく習慣となったと言われています。

芹なずな 御形はこべら 佛の座
すずなすずしろ これぞ七草 

春の七草の和歌 四辻左大臣の詠んだ和歌であると言われる

雪の中から顔をのぞかせる新芽(若菜)はエネルギー(生命力)に溢れているため、そのエネルギーをいただいて無病息災を願うというならわしです。

この若菜を人日の節句に宮中に祀るという風習が出来たのは、光孝天皇の時代からさらに進んだ第60代天皇である醍醐天皇(897年~930年)の御代で同じく平安時代のことであるとされています。

その頃は7種ではなく、12種であったりだとかでその数は厳密に決められていなかったそうです。

じゃあ、なんで7種類になったん?

師匠
師匠

こういった類の話は「所説あり」やねんけど…

・正月というのは、「区切」の月

・七という数字は「区切」の数字

・1月7日に「七」種類の若菜を供えていただくことで、溢れる生命エネルギーを取り入れることで氣力溢れ無病息災で居られる。

・人間には三魂七魄があると言われていて、この三魂七魄は天では一週間の七曜としてあらわれて地では七草として現れると言われていました。

三魂七魄(さんこんしちはく)とは

天魂・地魂・人魂の三つの魂と、

喜び・怒り・哀しみ・恐れ・愛・悪・欲望の七つの感情である七魄のこと。

春の七草

せり・なずな・すずな・すずしろ・ほとけのざ・ごぎょう・はこべら

小寒の記事でご紹介したものとは違うバージョン。
どちらも素敵♪

七草について、詳しくは小寒の記事をご覧ください。
ここではサラッと。


・セリ(芹)
『競り勝つ』
一か所に競り合うようにして生えていることから名づけられた芹は、生活習慣病予防や老化予防(=若々しさの維持)に欠かせないβ-カロテンや食物繊維、カリウム(むくみの改善に)、ビタミンC、ビタミンK、葉酸などが含まれています。
また、香りの成分に鎮静や抗炎症作用もあると言われています。
鉄分も多く含まれているため、体内の血液量を増やすことが期待できます。

・なずな
ぺんぺん草でおなじみのなずなは、江戸時代はポピュラーな食材だったとか。
『撫でてケガレを祓う』
古くから邪氣を祓い万病を遠ざける薬草として親しまれてきたなずなの別名は『ぺんぺん草』
ビタミン、ミネラル、食物繊維、鉄分が豊富で、カリウムやビタミンBはほうれん草よりも豊富に含まれているとか。
生活習慣病予防、むくみ、お腹の不調、生理不順などに良いと言われています。

・ごぎょう(御形)
『仏さま(仏さまの体)』
ははこぐさ(母子草』とも言われる元祖草餅の材料。
喉の不調や利尿作用がむくみに効果が期待できるとされています。

・はこべら
『子孫繁栄』
別名を『ハコベ』と呼ばれるハコベラの語源は『蔓延芽叢(はびこりめむら)』と言われ、「繁栄がはびこる」ようにの願いが込められています。
ビタミンやカリウムカルシウムが豊富で、歯肉にも良いことから歯槽膿漏の予防薬として、目によく、腹痛の薬としても用いられていた古来より親しまれてきた野草です。
利尿作用・鎮痛作用・歯槽膿漏予防に。

・ホトケノザ(仏の座)
『仏さまの座る場所』
別名は『コオニタビラコ』でキク科の植物。タンポポに似ている田平子(たびらこ)のこと。
実は紫色の花をつけるホトケノザ(こっちはシソ科)とは別種なんですって。
整腸作用や健胃作用といった、まさに「お正月で疲れた胃腸をいたわる」のにぴったりな野草。
七草の仏の坐は黄色い花を咲かせます。

・すずな
『神を呼ぶ鈴』
正式名称の『蕪(かぶ)』の方がしっくりくるすずなは『神さまを呼ぶ鈴』の意味を持つ縁起の良い食材です。
消化を助け胃腸をいたわる成分が豊富で、葉と根の部分両方を入れていただきます。
葉は鉄分やカリウムが豊富とのことで女性に特におすすめです。

・すずしろ
『穢れのない純白さ』
大根のこと。二日酔い・食欲増進・冷え性・美肌によい食材です。

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その他1月7日に行われる行事

朝廷の年中行事として「白馬の節会(あおうまのせちえ)」という
正月7日(旧暦の1月7日)に白馬を紫宸殿の前庭で天覧のあと宴を開くという「年始に白馬を観ると邪氣が祓われる」という故事に則った儀式がありました。
江戸時代になり『人日の節句』を採用するようになり節句行事(年中行事)ではなくなったのですが、
「この日に白馬をみると縁起が良い」と言われています。

京都の上賀茂神社では白馬の節会が神事化された白馬総覧神事を見学することが出来ます。


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